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日々の下落に備える

レバレッジ運用をする上での注意

2つのレバレッジ

SPXL や TQQQ は「レバレッジ ETF」である。ある指標に対し、その何倍か(これらは3倍)の値動きをする ETF である。

トライオート ETF (口座の種類の名前)等、証券会社の口座には「レバレッジ投資」ができるものがある。これは、預けたお金を担保にして、その数倍(株式は大抵最大5倍)の取引ができるようになっている。

後者の意味のレバレッジをかけた投資をする際に、注意しなければならないのが、下落リスクである。特に、レバレッジ ETF を運用する場合は、上下幅が大きいのでロスカットに注意が必要である。

ロスカット

ロスカットとは、端的に言うと「証拠金が足りないから強制的に決済する」ということである。

5倍のレバレッジをかけた投資をしているときに、価格が20%下落したとしよう。x 円投資していて、5x 円分の商品を持っていたとする。20% 下落するということは、商品の価値が 4x 円になるということである。保有している商品を全部売って、x 円の損失があるわけなので、手元に残るのは0円である。もっと下落した場合は、外からお金を補填しなければならなくなる。そのため、証券会社では「必要証拠金」というものを定めたり、証拠金の割合が低い場合に警告を行ったりして、ロスカット時に「赤字」にはならないように工夫している。

5倍程度のレバレッジ投資を行う場合、20%下落すると証拠金がなくなり、口座外から補填の必要がある…というリスクがある。

例えば、筆者が利用しているインヴァスト証券については、【トライオートETF】ロスカットまでの計算方法を教えてください。によると

「ロスカットまでの値幅 =(有効証拠金-必要証拠金)÷保有口数÷円換算レート(ドル円)」

である。必要証拠金は、

「円換算金額 ÷ 5」程度

出典)である。

どの程度の下落がありうるか

日々の下落

それでは、具体的に、インヴァスト証券で、TQQQ を長期保有で運用しようとしたときに、突然の暴落(長期の下落はゆっくり対応すれば済むのである…)にどのように備えなければならないか考えてみたい。

まずは、良く分析されている S&P500 指数について分析をしてみる。S&P500 については hass 氏による暴落が起きたらS&P500のレバレッジドETFは消滅しちゃわないの? に良くまとまっている。当該記事によれば

前日終値に対する最大下落率(最大日次下落率)は,ほとんどの場合-3%,-4%程度に収まることがわかります.テールリスクとして,-20%を超えるのは1度だけで,それ以外で-10%を超えることはありません.

日付 下落割合
1987/10/19 -0.2047047
2008/10/15 -0.0942075
2008/12/1 -0.0898755
2008/9/29 -0.0880678
2010/5/6 -0.0858414
1987/10/26 -0.0844412
2008/10/6 -0.0830218
2008/10/22 -0.0829695
2008/10/10 -0.0770617
2008/10/9 -0.0769082

とのことである。

米国株式市場には、サーキット・ブレーカーという制度がある。1日の、ある程度以上の下落を防ぐ仕組みである。ロイター通信の焦点:ブラックマンデーから30年、株価暴落の再来あるかによれば

現在のルールでは、S&P総合500種が、米東部時間の午後3時25分までに7%下落した場合、取引は15分間停止する。取引再開後も下落が続き、まだ3時25分前であれば、下落率が13%に達した時点で再び取引が停止される。もし3時25分以降に下落が続いていた場合は、取引は継続される。だが下落率が20%に達した場合、時間帯に関わらずその日の取引は終了となる。

となっている。

また、2018/02/05 (月)は、終値ベースではあるが、1175.21ドル(4.60%)安であったようで、金額としては最大幅であった。割合としては、いままでも何度かあったレベル…ということである。

なので、このように考えたい。S&P500 指数は:

  1. 日々の値下がりが2.5%あたりが年に1回くらいの頻度である。 3% を超えると「珍しい」レベルである。(珍しいといってもないわけではない)
  2. 7.7% を超えるのは過去に9回で、リーマンショックのときは本当におかしい。
  3. 理論的には、20% 程度下落しうる。

という性質を持つ。

ということは、SPXL や TQQQ は(TQQQ も「似たようなもの」とひとまず考えておく。)その3倍の動きをするものであるから、次のことが言えるだろう。

SPXL や TQQQ は:

  1. 日々の値下がりが 9% を超えると「珍しい」レベルである。7.5%あたりが年に1回くらいの頻度である。
  2. リーマンショックレベルでは、20% を超える下落が続く
  3. 理論的には、60% 程度下落しうる。

という性質を持つ。

長期の下落

本記事では詳細は割愛する。

2018年2月の「調整」は総計 30% 程度下落した。

SPXL については、2009年からの最大下落は 49.16%、TQQQ については、2010年からの最大下落は 37.42% である。

2002年からのシミュレーションによる最大ドローダウンは、SPXL が 90.4% である。TQQQ は 94.7% である。

  • 普段については、レバレッジ 2~3倍程度までは問題がなさそう。
  • 恐慌・大ショック程度の場合は、1.5~2倍程度までレバレッジを減らす。(大きくリバランスもする)

どのようにして、「調整」と「ショック」を見極めるかは非常に難しい問題だと思うが、2.5倍程度を軸にして考えてみたい。

どのように資産管理を行うか

逆指値での売却

5倍のレバレッジ運用を行う場合、20%以上の下落があると一発 KO である。逆に、一発 KO を避けるためには、20%まで下がる手前で売却し、それ以上の下落を防ぐ必要がある。幸い、インヴァスト証券では、逆指値の売却が可能である。

一方で、少しの下落で売却していては、手間がかかるし、効率も悪い。また、「次の日に上昇する」機会を失うのは、機会損失にもつながる。

実効レバレッジ4倍の状態からのシミュレーション

4倍シミュレーション 1: 8%下落

TQQQ が 8% 値下がりすることを想定してみる。面倒なので単位は全て円にする。

証拠金 x で、4x 保有する(その時点で4倍のレバレッジ)。8 %の下落では、損失は:
4x * 8 / 100 = 0.32x
である。よって、有効証拠金は:
x – 0.32x = 0.68x
である。保有資産価値は:
4x * (100 – 8) / 100 = 3.68x
である。必要証拠金想定額は:
3.68x / 5 = 0.736x
である。有効証拠金 0.68x に対して必要証拠金想定額 0.736x なので、途中でロスカットが発生している。

ということで、4倍程度のレバレッジ運用をすると、8% 下落をした際に、5倍がレバレッジ上限であるような口座では、ロスカットを生じる。

4倍シミュレーション2: 5%下落

TQQQ が 5% 値下がりすることを想定してみる。

証拠金 x で、4x 保有する(その時点で4倍のレバレッジ)。5%の下落では、損失は:
4x * 5 / 100 = 0.2x
である。よって、有効証拠金は
x – 0.2x = 0.8x
である。保有資産価値は:
4x * (100 – 5) / 100 = 3.8x
である。必要証拠金想定額は:
3.8x / 5 = 0.75x
である。有効証拠金 0.8x に対して必要証拠金想定額 0.75x なので、ロスカットは発生しない。実効倍率は:
3.8x / 0.8x = 4.75
であるから、4.75倍である。

ということで、4倍程度のレバレッジ運用をすると、5% 下落をした際に、実効倍率は4.75倍程度に増加する。

4倍シミュレーション3: 8%下落と、一部 5% で損切り

TQQQ が 8% 値下がりすることを想定してみる。保有商品の1部を、5% 下落した時点で売却する。

証拠金 x で、4x 保有する(その時点で4倍のレバレッジ)。そのうち、1/4 は、5% 下落した時点で売却すると仮定する。8 %の下落では、損失は:
x * 5 / 100 = 0.05x
3x * 8 / 100 = 0.24x
の合計
0.05x + 0.24x = 0.29x
である。よって、有効証拠金は:
x – 0.29x = 0.71x
である。保有資産価値は:
3x * (100 -8) / 100 = 2.76x
である。必要証拠金想定額は:
2.76x / 5 = 0.552x
である。有効証拠金 0.71x に対して必要証拠金想定額 0.552x なので、ロスカットは発生しない。実効倍率は:
2.76x / 0.71x = 3.887…
であるから、3.89倍程度である。

ということで、4倍程度のレバレッジ運用をし、保有資産の 1/4 を 5% 下落をした際に売却するように逆指値の売りを入れておく。ある日にまず 5% 程度下落したタイミングで一部を自動で売却、さらに下落して、8% の下落したとする。5倍がレバレッジ上限であるような口座では、その1日だけでは問題がない。また、その1日が終わった時点で、実効レバレッジは3.89倍程度である。

実効レバレッジ3倍の状態からのシミュレーション

3倍シミュレーション 1: 8%下落

TQQQ が 8% 値下がりすることを想定してみる。

証拠金 x で、3x 保有する(その時点で3倍のレバレッジ)。8 %の下落では、損失は:
3x * 8 / 100 = 0.24x
である。よって、有効証拠金は:
x – 0.24x = 0.76x
である。保有資産価値は:
3x * (100 – 8) / 100 = 2.76x
である。必要証拠金想定額は:
2.76x / 5 = 0.552x
である。有効証拠金 0.76x に対して必要証拠金想定額 0.552x なので、ロスカットは発生しない。実効倍率は:
2.76x / 0.76x = 3.631…
であるから、3.63倍程度となる。

ということで、3倍程度のレバレッジ運用をすると、8% 下落をした際に、実効倍率は3.63倍程度に増加する。

3倍シミュレーション2: 5%下落

TQQQ が 5% 値下がりすることを想定してみる。

証拠金 x で、3x 保有する(その時点で3倍のレバレッジ)。5%の下落では、損失は:
3x * 5 / 100 = 0.15x
である。よって、有効証拠金は
x – 0.15x = 0.85x
である。保有資産価値は:
3x * (100 – 5) / 100 = 2.85x
である。必要証拠金想定額は:
2.85x / 5 = 0.57x
である。有効証拠金 0.75x に対して必要証拠金想定額 0.57x なので、ロスカットは発生しない。実効倍率は:
2.85x / 0.85x = 3.352…
であるから、3.35倍である。

ということで、3倍程度のレバレッジ運用をすると、5% 下落をした際に、実効倍率は3.35倍程度に増加する。

3倍シミュレーション3: 8%下落と、一部 5% で損切り

TQQQ が 8% 値下がりすることを想定してみる。保有商品の1部を、5% 下落した時点で売却する。

証拠金 x で、3x 保有する(その時点で4倍のレバレッジ)。そのうち、1/4 は、5% 下落した時点で売却すると仮定する。8 %の下落では、損失は:
3x / 4 * 5 / 100 = 0.0375x
9x / 4 * 8 / 100 = 0.18x
の合計
0.0375x + 0.18x = 0.2175x
である。よって、有効証拠金は:
x – 0.2175x = 0.7825x
である。保有資産価値は:
9x /4 * (100 -8) / 100 = 2.07x
である。必要証拠金想定額は:
2.07x / 5 = 0.414x
である。有効証拠金 0.7825x に対して必要証拠金想定額 0.414x なので、ロスカットは発生しない。実効倍率は:
2.07x / 0.7825x = 2.64
であるから、2.6倍程度である。

ということで、3倍程度のレバレッジ運用をし、保有資産の 1/4 を 5% 下落をした際に売却するように逆指値の売りを入れておく。ある日にまず 5% 程度下落したタイミングで一部を自動で売却、さらに下落して、8% の下落したとする。5倍がレバレッジ上限であるような口座では、その1日だけでは問題がない。また、その1日が終わった時点で、実効レバレッジは2.6倍程度である。3倍より低くなっている。安心。

3倍シミュレーション4: 8%下落と、一部 5% で損切りその2

TQQQ が 8% 値下がりすることを想定してみる。保有商品の1部を、5% 下落した時点で売却する。

証拠金 x で、3x 保有する(その時点で4倍のレバレッジ)。そのうち、1/6 は、5% 下落した時点で売却すると仮定する。8 %の下落では、損失は:
x / 2 * 5 / 100 = 0.025x
5x / 2 * 8 / 100 = 0.2x
の合計
0.025x + 0.2x = 0.225x
である。よって、有効証拠金は:
x – 0.225x = 0.775x
である。保有資産価値は:
5x /2 * (100 -8) / 100 = 2.3x
である。必要証拠金想定額は:
2.3x / 5 = 0.46x
である。ロスカットは発生しない。実効倍率は:
2.3x / 0.775x = 2.967…
であるから、2.97倍程度である。

ということで、3倍程度のレバレッジ運用をし、保有資産の 1/6 を 5% 下落をした際に売却するように逆指値の売りを入れておく。ある日にまず 5% 程度下落したタイミングで一部を自動で売却、さらに下落して、8% 下落したとする。その1日が終わった時点で、実効レバレッジは2.97倍程度である。

まとめとその他…計算過程は省略

  • 実効3.5倍で 8% 下落すると、4.47倍程度に上昇する。
  • 実効3.5倍で 8% 下落するとき、5% 時点で1/5売却していると、3.47倍程度になる。
  • 実効3倍で 8% 下落すると、3.63倍程度に上昇する。
  • 実効3倍で 8% 下落するとき、5% 時点で1/5売却していると、2.73倍程度になる。
  • 実効2.5倍で 8% 下落すると、2.88倍程度に上昇する。
  • 実効2倍で 8% 下落すると、2.19倍程度に上昇する。

このような感じだ。実効3倍を超える場合、逆指値の売りが入っていないのは確実に危険だろう。トライオート ETF では、アラートメールがくるのが、証拠金150%と120%、つまり3.33倍、4.17倍の時なので、注意したい。

トライオート ETF のライジングは、1口の推奨証拠金が22879円、1口当たり最大6株の ETF を購入する。41814円分である。最大で約2倍運用となる計算だ。これくらいがお勧めの証拠金率なのだろう。